私たちクァルテット・エクセルシオは、定期演奏会で、ベートーヴェンの作品を必ず取り上げています。 定期開始以来8年かけてその全作品を網羅、続いて再び2巡目に入りました。


なぜ、「ベートーヴェン」なのか?

私たちが弦楽四重奏に熱心に取り組み続けるのも、実は同じ理由からなのです。
それはとてもシンプルで、
「ベートーヴェン後期の作品があるから」
という一言に尽きるのです。

まず誰でも耳にしたことのある「第9」。
苦悩の人ベートーヴェンが晩年ついに到達した境地において創造されたこの作品は、クラシック最高の遺産であると多くの人に知られています。
しかしベートーヴェンにはさらにその先の物語があるのです。

最後のピアノソナタも、第9も、ミサ・ソレニムスも創り終えたベートーヴェンは、その最晩年に弦楽四重奏の世界に再び戻ります。
人生最後の2年間を、病気と戦いながらも弦楽四重奏の世界に没頭し、6つもの作品を完成させたのです。



ベートーヴェンが最後に没頭した世界とは何なのでしょうか?

私たちはその楽譜と向き合い、その深淵にある真実を突き止めようともがきます。
ですが真実に届くようでいつまでも手に届かない。もどかしさを感じながらも、無我夢中で手を伸ばしているところへ、やがてこれらの作品のもつ圧倒的なパワーの前に、私たちはどうしようもないほどの感動に心を激しく揺さぶられるのです。

これらの作品でベートーヴェンは、この世界で生きている人間が、普段は毎日毎日を一生懸命に生きて、でもそこで悲しいことや苦しいことに巡り会いながらも乗り越えてやはり生きていく、その生き方こそが人間の生き方であり、それはかけがえ無く素晴らしいことだと、高らかに歌いあげているのではいでしょうか。
人間愛を讃える歌として率直に心に響くベートーヴェンの音楽は、私たちに素直な感動を与えずにおりません。

この感動を多くの人に感じて欲しい。
音楽の持つ力がこんなに素晴らしいものだと言うことを知ってもらいたい。
そんな思いを持って、私たちはベートーヴェンに取り組んでいるのです。